銀河辺境の花嫁 はじめまして、メールをありがとうございます。 貴方のお話、とても興味深く拝見させていただきました。 よろしければまたメールをいただけるとうれしいです。 こんにちは、こちらこそよろしくお願いしますね。 今日は私のことを少し書きます。 あまり面白い話はありませんが、少しでも私のことを知っていただけると嬉しいです。 ・ ・ ・ こんにちは、今日も私の住んでいる所はとても天気がいいです。 今日は良い知らせがあります。 適正審査をパスして念願のマクロスのクルーに選ばれたんです。 配属を聞いたときには思わず飛び上がりそうになりました。 そしてこれは少し悪い知らせです。 特別訓練のためにしばらくメールができなくなります。 マクロスにはいくつかのPT部隊も配属されるそうですね。 貴方のいるところも配属にならないかな? そうすればメール越しじゃなくて貴方本人に会えるのに・・・。 それでは訓練終了後に、また。 それからマクロスが太陽系の端にワープしやっとのことで地球圏に戻ってきてからも、彼女はメールのやり取りを続けた。 顔も年齢も知らない相手。 知っているのはどこかの部隊に所属しているということと、彼が“ラオデキヤ”という名だということだけ。 * * * 「“こんにちは、そちらの戦況はどうですか?”・・・と」 そして今日もは空き時間を利用してメールを打っていた。 「メールが来るのは元気な証拠・・・ってことよね?」 お互い明日送るメールを受け取れるか保障のない身。 だから短い文の中に精一杯“今”を詰め込む。 「“それでは体に気をつけて。無理しないでね? ”と。これでよし」 あとは送信ボタンを押せばいい。 一度ざっと見直して誤字脱字がないか確認してからはメールを送る。 「次のメールを送るまで、次のメールを受け取るまで二人が無事でありますように」 そっと顔を伏せて祈りを捧げながら。 メールを送り終えて小型の端末の電源を落とすと背後から声をかけられた。 「あら、また例の彼?」 「アヤさん。はい、最近送っていなかったので」 振り返れば緑の髪の女性。 特殊部隊SRXチームのアヤ大尉だった。 彼女とはロンド=ベル隊がそろってマクロスのフォールドに巻き込まれて太陽系の端っこからの帰還の旅路についた当初に、精神的に少し参っていたの相談に乗って以来こうして気軽に声をかけてきてくれる。 ブリッジと戦場の最前線とそれぞれ身を置く場所は違ってもはパイロットたちと仲が良かった。そして彼女に密かに思いを寄せている者も少なくはない。 一度体調の悪かったオペレーターの代理で入ったときなど彼女の《激励》で気力アップどころか撃墜数が普段の倍近くまで跳ね上がった者までいたという。 そんなわけで表面上はそれとわからないが水面下では熾烈な争奪戦と表立っては暗黙の不可侵条約が同時に存在しているらしい。 まぁ過剰なスキンシップなどとろうものならどこから出てきたのか数人の集団にあっという間に連れ去られて修正されるのは日常茶飯事。その間にさりげなく他のものがフォローを入れる。 戦闘時以上の恐るべきコンビネーションである。 もちろん人気のない場所でこっそりなんてことも不可能。 なにせその中には天下のニュータイプやら念動力者やら勘の良い者はそれこそ掃いて捨てるほどいて、かつ情報網が半端じゃない人物や彼女のためなら職権乱用もいとわない人物etc...彼らを出し抜くのははっきり言って一人で異星人たちを殲滅するくらい難しい。 しかし彼ら目下最大の好敵手は意外にも彼女自身顔を見たこともないメール友達であった。 なまじ顔を知らない分相手のイメージはメールの文の端々から想像して勝手に膨らんでいく。 それに彼女がその顔も知らない相手に少なからず想いを寄せているのは傍から見ても明らかだった。 だからロンド=ベルの一部の男性陣の間では“いかにしてその相手を見つけ、そして彼女に対して良からぬことをしないよう説得(?)するか”というのがよく話題に上っていた・・・とか。 そんな戦争とは全く関係のないところで密かな火種が起こっていた折に、とうとうエアロゲイターがその本隊を地球圏に向けて動かし始めた。 最終防衛ラインに立つロンド=ベル隊のメンバー。 ここから先に彼らを行かせるわけにはいかない。 緊張感で張り詰める空気の中、相手から通信が入った。 《余はゼ・バルマリィ帝国監察軍第七艦隊総司令、ラオデキヤ=ジュデッカ=ゴッツォ士帥である》 よく通る声に高圧的な態度。 服従か死か、突きつけられる選択肢。 《さぁ、選ぶがよい》 もちろんメンバー全員が同じ答えを胸に抱いていた。 誰が支配など望むものか。 しかしそんな中、たった一人だけそれとは全く異なることに思考を支配されている者がいた。 「ラオデキヤ・・・って」 ブリッジの自分の席で呆然としている一人の女性―――だ。 「もしかして・・・でも、まさか」 目の前の戦艦にいる人類の敵の総司令と同じ名のメールの相手。 単なる偶然? それとも――――――。 そして彼女の中に生じた疑問を肯定するようなことを相手が言ってきた。 《だが、もしこちらの条件を呑むというのなら我々は手を引く》 それはマクロスのブリッジクルーで“”という名の女を特使としてバルマーに連れて帰ることを承諾するということだった。 「なっ!?」 もちろん他のブリッジクルーを含め戦艦の外に出撃し展開しているロボットのパイロットたちは猛反対。 「何バカなことを!!?」 「そんなこと承諾できるか!!」 《できぬと申すか?》 「当たり前だ!!」 「地球もも俺たちが絶対渡さねぇ!!!」 《ならば・・・滅ぼすまで》 マクロスの前方を囲んでロボットが集まる。 彼女を、自分たちの地球を守る。 彼らの決意は、しかし彼らが守ろうとしている女性の一言によって制された。 「待って!!」 『・・・?』 オペレーターのインカムを奪いそれに向かって叫んだ女性は更に言葉を続けた。 「教えてください。貴方はあの“ラオデキヤ”さんなんですか?」 その問いに全ての人物が驚きに目を見開いた。 少々の沈黙の後に静かに答えが返る。 《・・・その通りだ》 それに再び固まる周囲をよそに、本人も驚くほど冷静には言葉を紡ぐ。 「私がそっちに行けば、本当に戦争は回避できるんですね?」 《それに関しては余の士帥の位と純粋なるバルマー人としての誇りにかけて保障する》 はふぅと一度大きく息を吐き、気持ちを落ち着けてからゆっくりと顔を上げ、自分の考えを口にした。 「わかりました。その条件、承諾します」 『っ!!?』 瞬時に隊の中に動揺が走る。 相手は人類の敵で、しかも今まさに侵略しようとしている艦隊の総司令。それなのに彼女は自ら進んで人身御供となろうというのか。 「、あんな奴の言うことなんか聞く必要ない!!」 言ったのはリュウセイだった。 「それに口ではどうとでも言える。約束を守るという保証はどこにもない」 ライがそれに続けて他のメンバーも口々に彼女に思いとどまるよう言った。 しかしは首を横に振る。 「私一人でこの戦いが回避されるのなら喜んで行きます。それに・・・彼は約束を違えるような人ではないから」 顔を合わせたことはなくてもその文面から相手の性格や人物像は案外詳しくわかるものなのだ。 少なくともはラオデキヤという人物が自分を人質とした途端に一斉攻撃を仕掛けるようには思えなかった。 何故そこまで信じられるのかと問われれば答えに困るが、とにかくそんな気がする。 「生まれ育った星が違っても例え文化や風習が違っても、お互いが歩み寄ればきっと分かり合える」 そしてはバルマーの艦隊へと一人旅立った。 * * * 戦艦に着いて早々に通されたのは広い一室。あまり豪華といった感じではない調度品が少しばかりで少々殺風景なおそらく執務室のような用途の部屋。 ここまで彼女を案内してきた兵士がここで待てと短く告げて部屋を出て行く。 来客用の大きな長いすの端に腰掛けてはようやく張り詰めさせていた気を緩めた。 「はぁ・・・」 半ば勢いでここまで来てしまったが、実際は恐怖と不安で泣き叫びたい心境。 それでも先程言った言葉は本心からだったし、相手のイメージも変わらず悪いものではない。 どうしてそう思ったのかは未だにわからないが。 と、カツカツ規則正しい足音がして部屋の前で止まった。1、2秒の間があってノック。 「・・・どうぞ」 小さく返すとゆっくりと扉が開き男が入ってきた。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 かなりの長身で立ち姿は威厳と自信に満ち溢れ、流れる長い銀の髪を後ろでまとめた髪型にも品がある。全体的に冷たい印象を受けるものの彼女の感覚でも十分ハンサムな部類に入る男はじっと彼女のことを見詰めていた。 しばらくそうしていて不意に彼が口を開いた。 「汝が・・・本当に、よく似ている」 通信機越しに聞いたものと同じ声。 (それじゃ、この人がラオデキヤさん) 整った顔にこうまじまじと見つめられるとさすがに恥ずかしくなっては頬を染めて視線を逸らした。 その髪に指先で触れてラオデキヤが言う。 「髪を、染めているのだな」 はっとして顔を上げる。 「なんで・・・」 「その瞳も偽っているのだろう?」 現在の彼女の容姿は黒髪に漆黒の瞳。マクロスの審査に提出した書類にもそう記載されている。 人前に出るときはずっと髪を染めてカラーコンタクトをしていたからその事実を知っているのは彼女自身と彼女の家族のみ。しかも彼女の両親はすでに他界していて母方の祖母が唯一の家族。 どうして彼がそれを知っているのか。 「貴方が送り込んだスパイに調べさせたんですか?」 「それもあるが、汝のことを知ったのは本当に偶然だ」 そう言ってふと彼女の背後の机に置かれた時計のようなものに視線を走らせた。 「すまないが余は進路の指令を出してこなければならぬ」 彼女がこちらに来た以上、長く地球圏に留まるのは向こうに不信感を与えるだけ。早々に帝国本土に帰還した方がいい。 「汝の家族に別れを言う間がなかったな・・・すまない」 「平気です。おばあさまならきっと納得してくれますから」 女手一つでずっと自分のことを育ててくれた祖母ならきっと笑って納得してくれる。 ラオデキヤは『そうか』と一言呟いて部屋を出て行った。 出掛けに扉のところで振り返り、 「この部屋は汝の部屋として使ってかまわない。あいにく女物はないが奥にクローゼットもある。好きに使うがいい」 そう言って。 ラオデキヤが一通り命令を下して再びの部屋を訪れたのはそれから数時間も後のことだった。 急激な環境の変化に疲れているにもかかわらず彼女はソファーに座って彼が来るのを待っていた。 さすがに途中暇になって部屋を探索―――それによるとどうやらこの部屋は生活することを前提に設計されているらしくこじんまりとしたキッチンまであった―――して、彼が来たときはちょうどお茶を入れて一息入れてたところだった。 「一杯いかがですか?」 「いただこう」 勧められるままカップに口をつけるとほんのりハーブに似た香りが肩の力を抜いてくれる。 二人して無言でカップを傾け、双方人心地ついたあたりで先にから話を切り出す。 「それで、どうして私が姿を偽っていると知ったんですか? それに私一人のために侵略をやめるなんて」 待っている間にシャワーを使いすっかり色を落とした彼女の髪は本来の色を取り戻している。それは光を反射して煌く艶やかな銀色。そしてカラーコンタクトを外した瞳は薄く水色のかかった銀。 どちらも地球のものではない色。 異端を嫌う者たちの心無い仕打ちを危惧した彼女の祖母の意見で物心ついたときにはすでに黒髪に漆黒の瞳という変装が普通になっていた。 ラオデキヤは自身の髪を一房手に取り彼女に見せた。 「同じ色であろう?」 「・・・・・・」 長年黒く染めていたため少々痛んではいるが同じ銀の髪。 「瞳も」 顔を上げて覗き込んだ彼の瞳も同じく銀。 「汝の体には我々バルマーの民の血が流れている」 「・・・え?」 ラオデキヤが言うには気の遠くなるほど昔に権力争いや侵略行為に嫌気がさした幾人かのバルマーの民が本土を後にしていたらしいのだ。 もしその中の何人かが長い旅の末に大昔の地球にたどり着き、そこで自分たちの正体を偽って密かに生きていたとしたら・・・。 「長い間に血は薄れたが、汝の時に偶然銀の色が出てしまったのだろう」 彼女のことを知り、極秘に血液を入手してバルマーの機械で調べたところ彼女のが確かにバルマーの民の末裔であるとわかった。 それで相手がどんな人物なのかメール友達を装ってずっと探っていた。 「それと私が特使になるとどういう関係が?」 するとラオデキヤは気まずそうに視線を逸らした。 「それは・・・」 「それは?」 どうも歯切れの悪い相手の態度にが訝しげな表情をすると彼ははぐらかすのを諦めたのか肩をやや落として低く言った。 「文字で、言葉を交わすだけでは満足できなくなった」 「は?」 が目を丸くする。 「写真や映像でなく汝を直に目の前にして、こうして言葉を交わしたかったのだ」 だがまさか“話し相手に彼女を寄越せ”なんて言えるはずもなく。 だから特使という表面上の大義名分を貼り付けて現在に至る。 あまりにも極端な本音と建て前に思わずは吹き出してしまった。 「それならそうって言え・・・ないか。やっぱり」 このことを知っている者は艦内にも片手ほど。 口に手を当ててクスクス笑うにラオデキヤは言う。 「だが特使としての役は果たしてもらう」 侵略を止めて帰還するのだ。周囲に実際の理由を偽るからにはそうしてもらわないと困る。 「それに・・・」 と彼が小さく呟いた 「汝の故郷を戦火の下にさらすにはしのびない」 という名の女性がその身を持って異星人の侵略を退けたことは長く地球圏で語り継がれることとなる。 そしてラオデキヤと交わした約束どおり、それからバルマーの戦艦が地球圏に侵略目的で訪れることもなかったことを付け加えておく。 Fin. 言い訳じみた独り言 みあさまの5757リクで“士帥落ち前提逆ハーの夢のあるSS”でした。 毎回毎回同じ口上なんですが・・・長らくお待たせしました。 ヒロイン設定はたしか去年のチャットでだったはず。 どんどん士帥がヘタれてくような気がするんですがこれでいいですか?(弱気) もう半年以上ゲーム中で生士帥(生って・・・)見てないものですごくキャラが微妙なんですが・・・。 こんなものでよければお納めください。 それではキリ番申告ありがとうございました m(_)m |