Let’s 秘湯探索 季節は紅葉の見られ始めた初秋の頃。 ガイアセイバーズと取りまとめているハヤタのところに二人の人物が休暇が欲しいと訪れた。 「この時期にか?」 『この時期だからだ(です)!!』 見事にハモる二人の叫び。 「この時期を逃したら次にいつあの紅葉を見れるかどうかわからない」 「この時期を逃したら次にいつあの温泉に入れるかわかりません」 そうしてこの二人―――イングラムとが同時に叫んだ。 「だからどうしてもK村に行きたいんだ(です)!!」 そして二人は同時に顔を見合わせた。 「君も、なのか?」 「少尉こそ・・・」 偶然にも二人の行き先は一緒だった。 そして二人がそこに行きたいと思った原因も実は一緒だったりする。 最近テレビでやっていた“今一番行きたい隠れた穴場特集”でほんのちょっとだけ取り上げられていたそこは、緑豊な温泉の地だという。 しかもそこの自然は人の手がほとんど加えられていないとくれば、もうこれは行くしかない。 それで二人はそれぞれ休暇を貰えないかとやってきたのだった。 「何とかなりませんか?」 「だが、現状では・・・」 「三日・・・いや、二日でいい!!」 「残業でもなんでもしますから!!」 あくまで食い下がる二人。ニ対一ではさすがに分が悪すぎた。 それで結局、三日の休暇を二人一緒に取るということで話は決着した。 「ただし三日目の夜には職務に復帰すること」 という条件付きだけれど。 * * * そのK村というところは最寄りの大きな街からバスが日に五本しか出ていないというとんでもなく山奥に位置していた。 周囲を山や森に囲まれ、野生の動植物が人の手が加えられることなく自然の食物連鎖の微妙なバランスを保って存在している。 ただし、本当に自然が豊か・・・すぎた。 「話によるともう少しで見えてくるはずなんだが・・・」 「・・・・・・」 着替えやらの荷物の入ったバッグを背負って、バス停で下りてからもうかれこれ二時間近くプチ登山状態が続いている。 バスが通っていた道はかろうじて舗装されていたものの、一歩横道に入ればそこは砂利道。 それはずっと先の森らしきところに続いていた。 「これは楓だな・・・」 途中、何度かイングラムは立ち止まって大きな樹の幹に触れて自分の背の何倍も高いそれを見上げて感嘆のため息を漏らした。 まだ紅葉は始まったばかりといった雰囲気で遠くの山の木々はまだ青々とした葉を茂らせていて、下の方の樹が少し色づいてきた程度。 それでも生で触れる自然に彼は満足そうだった。 しかしはというと・・・。 「・・・・・・」 歩き慣れない道に大苦戦ですでに言葉もない。 訓練生からセーブルームの要員に抜擢されて、配属されるまでの期間中にかなりの量の訓練をこなして体力は人並み以上についていると思っていたのだが、ここは予想をはるかに越えた自然豊な場所だった。 「、少し休むか?」 見かねてイングラムが声をかけた。 こちらはさすがというべきか、まだまだ余裕十分な様子。 「いえ・・・大丈夫です」 本当はあまり大丈夫でもないのだが、ここで立ち止まったら最後、再び歩き出せそうになかった。 それならまだ歩いている方がいいし、木々の間を抜けて吹く風が少しだけ気分を紛らわせてくれていたから。 「もうひと踏ん張り、頑張れます」 「そうか?」 無理やり作った笑顔で平気ですと重ねて言われてイングラムは再び歩き出した。 ただし、きもち歩調を緩めて彼女が楽なペースで。 (このペースでも夕暮れまでにはつくだろう) 木漏れ日に手をかざして彼は頭上の木々を見上げた。 風に揺れる葉の間から鳥の声がする。 それに微かに目を細めて先に進んでいく。 宿まであともう少しだ。 途中からわりと平坦な道に変わって楽に進めたおかげで、なんとか日が暮れる前に宿にたどり着くことが出来た。 この村にたった一つという旅館は最近改装工事を終えて外装も内装も真新しかった。 二人はそういう関係ではないので取った部屋は隣同士で別々。 仲居さんに案内されて部屋に入ると二人ともまず窓の外の景色に目を奪われた。 「これは・・・」 「凄い・・・」 言葉では形容の仕様のない美しさとはまさにこのこと。 近くを流れる大きな川のせせらぎとその両岸で所々色づいている紅葉のグラデーション。 天気がいいので遠くの山々まではっきりと見えている。 左手奥のひときわ高い山の頂上付近にうっすらかかっている白いものは雪だろうか。 二人とも足の痛みも荷物を置きことすら忘れてしばしその風景に見入った。 旅の醍醐味といえば美味しい郷土料理。 はイングラムの部屋におじゃまして二人で夕食を食べることになった。 片方だけでは恥ずかしいからと示し合わせて二人とも浴衣姿である。 「大きいサイズがあってよかったですね。よく似合ってますよ」 「ああ、初めて着たんだがこういうのもなかなかいいものだな」 とまんざらでもない様子な彼だったが、実は自分のことよりもの浴衣姿に見とれてしまっていて話を半分しか聞いていなかったのはここだけの話。 そして決して豪華ではないけれど心まで暖かくなれる夕食の後はお待ちかねの入浴タイム。 なんたってこのために休暇を申請してここまでやってきたのだ。 「あぁ、楽しみvv」 入る前からもう舞い上がってしまって、思わずスキップしたくなってしまった。 はやる気持ちを押さえつつ、まずは室内のお風呂から。 「うわぁ、広い・・・」 洩れた呟きが壁に反射して軽くエコーがかかって聞こえる。 番組で言っていたとおり・・・いやそれ以上にそこは広かった。 湯気で奥まで見えないが、誰もいなければクロールの練習ができそう。 体を洗ってからそっと片足を入れてみる。 心地よい温度で、片までつかるとじわーっと全身が温まっていくのを感じた。 「はぁ〜・・・」 もう出てくるのはため息ばかり。 しばらくそこで広いお風呂―――運良く誰もいなくて貸切状態だった―――を堪能して、今度は外の露天風呂。 こちらも室内ほどではないが広く作られていて中よりも少しお湯の温度が高かった。 縁の岩に腰掛けて月明かりに浮かぶ外の景色を見ながら火照った体を冷まし、少し肌寒く感じた頃にそっと湯船につかった。 場所がお湯の出口に近かったらしく進んだ先が熱湯で、 「あちっ」 とが小さく声を上げた。 すると・・・なんと湯煙の向こうから声がした。 「?」 「い、イングラム!?」 そう。この旅館、露天風呂だけ混浴だったのだ。 実は浴場の入り口にその旨を書いた看板が立っていたのだが、あいにくと彼女の意識はすでに温泉に向かっていたために気付かず通りすぎていたのだった。 慌てて体に巻いていたタオルを引き上げて肩まで湯船につかる。 「こ、混浴なんですか? ここ」 「浴場の入り口にそう書いてあったが・・・見なかったのか?」 (全然気付かなかった〜!!) 真っ赤になったは入って間もないのにもう全身ゆでだこ状態。 へにゃ〜っと縁に持たれかかっていると湯煙の向こうからまた声。 「そっちは下の景色が見えるか?」 「は、はいぃ。月も綺麗です」 すると少しの沈黙の後にやや言いにくそうに聞いてきた。 「・・・そっちに行ってもかまわないか?」 「え・・・えぇ!?」 どうしたらいいものか混乱する。 だが彼の、 「無理にとは言わんが・・・こっちは植えてある樹が邪魔でよく見えないんだ」 という控えめな言葉に彼が自然好きだと思い出して、 「・・・どうぞ」 きもち頬を染めてそう答えた。 少しして水面が揺れてイングラムがこちら側にやってきた。 気を使ってかできるだけ彼女の方は見ないようにして、景色のよく見える岩場に両腕を乗せて輝く月と眼下に広がる幻想的な景色を目を細めて見つめる。 しばらく沈黙が続いた後に彼はため息混じりに呟いた。 「こうしていると、地球が侵略の危機に瀕しているとは到底思えないな・・・」 毎日が死と隣り合わせ。刹那の中を常に緊張と共に生きている日々が嘘のよう。 「全ての人間が文明を捨ててかつてのように自然の中で生きていければ、争いなど起こらないのに」 「イングラム・・・」 普段活発で活力に満ちている彼がこの時だけは妙に儚く見えた。 お風呂上りのうっすら上気した肌に着崩した浴衣という彼の姿に女性としてどこか敗北感を抱いたり、次の日は朝早くから近くの森に散歩に行ったりとそんなこんなで充実した二日間を過ごし、三日目の午後の始めに二人は基地に戻った。 その日を境に二人が仲良さそうに話し込んでいるところやイングラムがセーブルームに頻繁に足を運ぶ姿、またはがアールガンの整備を手伝っているところなどをよく見かけるようになったとか。 そして、それはイングラムが記憶を取り戻しても変わることはなかった。 《必ず生きて、戻ってきてね・・・イングラム》 彼女の声は彼に創造主から抗う力を与えた。 「オレはイングラム=プリスケンだ!!」 * * * その日、連邦軍極東支部のとある基地のスタッフルームを二人の人物が訪れた。 曰く三日ほど休暇を取りたいらしい。 「しかし少佐。Rシリーズの最終調整には貴方がいないと困るんですが・・・それに少尉もこっちに配属されたばかりでしょう?」 許可をしぶる職員に二人が見事にハモらせて叫ぶ。 「この時期を逃したら次にいつあの紅葉を見れるかどうかわからない」 「この時期を逃したら次にいつあの温泉に入れるかわかりません」 そうしてこの二人―――イングラムとは同時に叫ぶ。 「だからどうしてもK村に行きたいんだ(です)!!」 そして二人は同時に顔を見合わせた。 「・・・・・・え?」 Fin. 言い訳じみた独り言 以上3333Hitを踏んだももrinさまのリクで“イングラム少尉夢で温泉ネタ”でした。 ももrinさま、本当にお待たせしました。 相変わらずの遅筆ですいません。こんなものでよければお納め下さい。 最後にSHOをクリアしたのか考えて、もう一回くらいプレイした方が・・・と思いつつ完成。 α版とはまた別の熱血っぽいイングラムをイメージしながら、結局はどうも儚げな感じになりました。 今まで書いたイングラムのドリームってみんなα版だったんで妙に新鮮な気持ちで書けました。 しかし・・・恋愛要素よりも背景描写よりもイングラムの色気vv部分に気合入ってたな(苦笑) |