プチスケン革命2.5for α 革命前夜 「オレの名はイングラム=プリスケン。見ての通り軍人だ」 軽くウェーブのかかった深青色の髪の人は言った。 「オレと共に来い・・・リュウセイ」 そして差し出された手を、彼は取った。 全てがある結果に向かって動き出した頃。 所変わって時空も変わって。どこぞのごくごく平和な某住宅街の一角で。 「ぷちいぃぃぃぃ!!」 「きゃぁ〜☆」 "オレたちの行動は無意味ではない。別の世界に何らかの影響を与えているはずだ"と言ったのは誰だったか。 そしてこの世界は少々曲がった結末へと進み始めた。 * * * 食堂は訓練の終わったパイロットやスタッフたちでごったがいしていた。 その一角で最近結成されたSRXチームの男二人が昼食を取っている。 「美人の上官でホントおれらラッキーだよな☆」 なんて会話を―――ほとんど一方的だが―――している二人。 「しかもダブル! いや〜軍に入ってよかったぁ♪」 「そんな不純な動機だといつか死ぬぞ? しかも・・・ダブル?」 その時シュンっと戸が開いて話中の片割れが食堂に入ってきた。 「あー! 昼食一緒にどうですか〜?」 目ざとくそれを見つけたリュウセイが立ち上がって手を振りながら大声で呼んだ。 「イングラムきょうか〜ん!!」 「別にかまないぞ」 言ってイングラムは昼食のトレーをテーブルに置いてリュウセイの向かい―――ライの隣―――に座って食べ始めた。 黙々と食べ続けるイングラム。そしてそれを見ているリュウセイ。その表情は心なし暗い。 「・・・なんでそっち座るんだよ」 「何か言ったか?」 イングラムが顔を上げた。 「いや、なんでもないです」 あいまいに笑って食べかけの昼食を慌てて口に運ぶ。 首を傾げつつ食事に集中するイングラム。 そして始終無言のライ。 SRXチームのイングラム=プリスケン少佐。 軍の中でその名を知らぬ者などない美人教官として有名な女性である。 バルマーから派遣された諜報員の彼女。 何の因果―――多くはどこぞの平行空間の影響―――か彼女は凄まじくもてた。 それは本人の知らないところで密かにFanクラブまでできるほど。 彼女に面と向かって想いを打ち明けるなんて勇気のある者はなかったが、そこは勘のいい彼女のこと。周囲がどういう目で自分を見ているかなどとっくの昔から気付いていた。 ただ何も言わなかったのはこれ以上面倒はごめんだと考えていたから。 「何故このオレが・・・」 というのも口調も態度も男勝りな彼女は・・・幸か不幸かスタイルが抜群だったのだ。 * * * その後着々とリュウセイの能力も開花し始め、戦場はとうとう宇宙へと移行した。 エアロゲイターの本艦も木星圏から離れそろそろ直接対決も迫ったその日、イングラムは格納庫の隅で衝撃的な告白を聞く。 「その・・・だから」 耳まで真っ赤になったリュウセイ。彼の言わんとしている事はすぐにわかった。 「相手が上官でもか?」 先回りして言うと、今度は顔を上げて真剣な表情ではっきりと言った。 「上官でもなんでも! おれはあんたのことが好きなんだ!!」 言ってしまってから慌てて視線をそらしそわそわし始める。 やはり答えなければいけないのだろうか? というよりも何が悲しくて部下から告白されなければならないのか。 しかしあの奥手なリュウセイがこんな大胆な行動に出たからには下手するとこの後すぐにでもとんでもないことになりそうな・・・。 「・・・・・・」 自分で思っておきながらその想像に寒気を覚え、とっさに彼女はこう言った。 「リュウセイ。これからSRXの合体訓練を行う」 一分一秒でも早くこの場から去らなければ。そんな思いに突き動かされて出た言葉がそれだった。 「え、あ・・・でも」 返事が、と言いかけたリュウセイにイングラムはトドメとばかりに付け加えた。 「合体が成功したら考えなくもない」 と。 そしてここは宇宙空間。 「少佐、本当にやるんですか?」 不安そうなアヤの声。 それ以上にイングラムは別の意味で不安だった。 リュウセイの念の練り方がいくら上達したとはいえ、アヤと合わせてもまだまだ合体に必要な数値には遠い。 しかし相手はあのリュウセイ=ダテ。 窮地に追い込まれるほどその能力を加速的に開花させるサイコドライバー。 下手すると彼一人で合体に必要な念動力をたたき出しそうで・・・かなり不安。 「いくぜっ! ヴァリアブル・フォーメーション!!」 そしてそれを裏付けるかのように現在順調に出力が上がっている。このままいくと本当に成功しそうな雰囲気だ。 ・・・かなりマズイ。 しかしそこら辺は抜かりなく。 イングラムにはまだ奥の手があった。 「アヤ、念が乱れているぞ。ライディース少尉、出力を下げろ。少し休憩にする。その間に各自精神統一を行っておけ」 適当に理由をつけて休憩にすると、イングラムは通信機を取り出して操作した。 できれば合体が成功してからにしたかったがこの際身の安全には代えられない。何事か入力して送信する。 あとは向こうが動いてくれればそれでいい。 (それまで合体できなければいいが・・・) そんな悩みは訓練を再開しようと他のRマシンのところに帰ってくると案外簡単に解消されていた。 「どういうつもりだよ、ライ!」 「どういうつもりもこういうつもりも・・・やけに張り切っていたと思ったら」 何やら口論しているライとリュウセイ。 「お前の恋路を応援する義理はない」 「おれたち仲間だろ!?」 「戦場ではチームだが・・・」 「なら協力してくれよ!!」 どうやら格納庫での例の話のことらしい。 そして衝撃の事実が発覚。 「プライベートではライバルだ」 はっきりきっぱりライは言い切った。 「少佐は渡さない」 「なっ・・・ちょっと待て。お前もだってぇのか!?」 (・・・ちょっと待て) 一番そう言いたいのはイングラムだ。 宇宙空間。逃げ場はあるようで実はない。 "人類に逃げ場なし" 誰かの言葉が脳裏をよぎった。 「二人とも、休憩は終わり。訓練再開よ!」 「おうっ!」 「・・・了解」 そして合体訓練は再開された。 のだが・・・。 「ライっ! 出力安定してねぇぞ!」 「リュウセイ。お前こそ念が乱れているぞ。もう少し雑念を捨てろ」 ついでに少佐のことも諦めろと付け加えられてリュウセイは思わず怒鳴り返した。 「んなことできるわけねぇだろっ!」 「二人とも、ちゃんと合体に集中して!!」 アヤの声ももはや二人には届いていない。 この分では合体は無理。 そしてその間にあちらが動く。 「ちょっと待って。レーダーに反応が・・・」 「嗅ぎつけたか・・・エアロゲイター」 呼んだ本人はそう言って訓練中断を告げた。 「これより敵機の掃討を開始する。単機で突撃するような馬鹿な真似はするな」 「了解っ!」 言ってるそばからR−1がその機動力を生かして前方に飛び出していった。 「教官、おれの戦いを見ててくれ!」 「なるほど・・・ふっ、撃墜数なら負けんっ」 なぜか闘志を燃やし信じられない機動力でその後に続くR−2。 (R−2にあれほどの機動力があったのか・・・) すでにどうにでもなれと自棄になっているイングラムはそんなことを思った。 人間脳が現実逃避をすると本当にどうでもいいようなことに意識がいくものだな、と実感した瞬間だった。 実際R−2はR−ウィングではないにしろ機動力重視の接近格闘用機体のR−1の後ろについていっている。 さすが天才・・・といったところか。 「いくぜ、T−LINKナッコオォォ!!」 「行け、光の戦輪よ!!」 そして二人とも強かった。 今までの模擬戦でどうしてできなかったんだ? もしかして自分の教え方がなってなかったのか? と本気で悩むくらい動きがよかった。 次々と撃墜されていく敵機。 (そろそろ頃合か・・・) 「教官!?」 R−GUNが急加速して敵の中心部に突撃した。 集中する攻撃。 「ぐうぅっ」 「今助けに・・・」 援護に入ろうとしたR−1の目の前で敵機の一つがR−GUNに取り付いた。 ばあぁぁぁんっ かんっと軽い音を立てて砕けた装甲の破片がR−1に当たった。 「うそ・・・だろ? そんな・・・」 しかし目の前にあるのは紛れもなく大破したR−GUN。 そしてコックピットに彼女の姿はなかった。 ゆっくりと革命の幕は上がる。 |